パラドキシカル・リーダーシップ産学共同講座 メンバー紹介
この記事では、未来を担うリーダーを育成する産学共同講座、「パラドキシカル・リーダーシップ産学共同講座」を担当する各教授をご紹介します。
本講座は、京都大学経営管理大学院の関口倫紀教授とアルーにて設立した講座です。内容の社会的な意義を認められ、経産省「高等教育機関における共同講座創造支援事業」の共同講座創造支援事業費補助金の交付事業としても採択されています。
経済産業省 高等教育機関における共同講座創造支援事業
本講座の教員の皆さまに、設立に対する想いや今後の展望についてお聞きしました。
関口倫紀 教授
設立に対する想いについて教えてください
私は、研究者として経営学の組織行動論や人的資源管理論の分野で研究を続けてきました。こうした分野の中でリーダーシップは非常に重要なテーマです。組織行動論研究の中でもリーダーシップについて非常に多くの研究があります。普段、大学の講義でリーダーシップについて教えることもあるのですが、その際に、これらのテキストに載っている様々なリーダーシップの理論は本当に実務家の役に立っているのだろうかといつも疑問に思っていました。
私もいくつかの組織でリーダーシップを取るポジションにいますが、実際にその立場に立ってみると、様々な相矛盾する要素が複雑に絡み合う中でなんとかやりくりをしないといけないという状況が多々あります。そうした状況に対応できるリーダーシップ理論はあるのだろうかとずっと考えている中で、パラドックスという概念と出会ったことが、本講座をアル―様と一緒にやってみたいと思ったきっかけであります。
今後の展望について教えてください
本講座は、パラドキシカル・リーダーシップについての答えを知っている私たちが、それを皆様に伝授するというものではありません。まだまだ研究途上であるパラドキシカル・リーダーシップについて、本講座にご参加いただく企業の皆様と一緒に探求していくものだと考えています。
また、パラドキシカル・リーダーシップについての研究は欧米や中国等でも取り組まれているのですが、本講座では、是非、日本の組織や人に合ったパラドキシカル・リーダーシップとはどういうものなのかということを考え、ディスカッションをしながら、新しい知を切り開いていきたいと思っています。
竹内規彦 客員教授
講座設立に対する想いについて教えてください
本講座でご一緒している関口教授とは20年来の付き合いがあるのですが、意気投合を した背景には、日本の経営学の知見をもっと海外に発信していきたいという共通の思 いがあります。今回実現した京都大学とアル―様の共同講座では、是非ここで得られた知見をどんどん発信していきたいと考えております。そして、ここでの学びが日本国内留まらず、全世界の知となるように、私も貢献させていただきたいと思います。
今後の展望について教えてください
パラドキシカル・リーダーシップの研究において私が特に注目をしているのは、「フォロワーからの視点」です。つまり、パラドキシカル・リーダーシップという複雑性を内包するリーダーの元で、フォロワーはどのような貢献行動をしていくのかということに関心を持っています。パラドキシカルなマインドセットを持ったフォロワーがどのように育成されていくのか、あるいは、フォロワーのチーム全体への貢献行動をどのように引き出していくのかなど、最近では少しずつフォロワーに言及する研究も見かけるようになりました。是非、本講座の中でも、新しい知見を発見して、実務家の皆様に活用いただけるような研究成果を発信していきたいと思います。
落合文四郎 特命教授
講座設立に対する想いについて教えてください
世の中の変化が激しく、リーダーの方々が様々な矛盾に直面する今、パラドキシカル・リーダーシップについて発信していくことが強く求められていると感じています。私もアル―株式会社を創業して以来、約20年経営に向き合っていく中で、様々な矛盾に直面してきました。過去を振り返ると、こうした矛盾と対峙する上で効果的なリーダーシップを知っていたら結果が違っていたかもしれないと思うことが少なからずあります。このような自身の経験からも、パラドキシカル・リーダーシップについて発信をすることで、今、ビジネスの現場で様々な矛盾と直面しているリーダーの方々のお役に立つことができるのではないかと考えております。
今後の展望について教えてください
是非、参加者の皆様と一緒に研究を深めていきたいと強く思っています。パラドキシカル・リーダーシップは、まだまだ分かっていないことも多い領域です。これまでの研究成果について講座の中で皆さんに共有させていただくことも当然やるのですが、それぞれに異なる状況がある企業ごとのケーススタディーについて、共同研究のようなかたちで取り組んでいけたらと考えています。我こそはという企業の方がいらっしゃいましたら、一緒にやっていきましょう。
また、もう一つ、私個人としては特に「リーダーの認知マネジメント」に関心を持っています。パラドキシカル・リーダーシップでは、リーダーが自身の内面と向き合って、人としての器を大きくしていくことが求められます。そのためには、自分の価値観や信条を変更していくような「適応課題」に向き合っていく姿勢が重要であると言われています。まだまだこのテーマは研究が足りないので、是非、本講座を通して、探究していきたいと考えています。
中村俊介 客員准教授
講座設立に対する想いについて教えてください
パラドキシカル・リーダーシップは、東洋思想との関係が深いことが多くの論文で触れられています。歴史的に思想・文化の中心である京都に位置し、日本を代表する研究・教育機関である京都大学と共にこの分野の研究を進められることは、大きな意義を持つと感じています。
かねてより「経営は矛盾の両立」というコンセプトでリーダー育成や組織開発に取り組み、この考え方がリーダーや組織の新たな可能性を切り拓く様を目の当たりにしてきました。本講座でさらにこの分野に関する探究を進め、たくさんの方と分かち合うことができることが今から楽しみです。
今後の展望について教えてください
私は組織開発・人材開発の実践者なので、パラドキシカル・リーダーシップの考え方が今後の組織開発やリーダー育成にどう役立つのかということを明らかにしていく事が一番の関心事です。そのために、パラドキシカル・リーダーシップを発揮している事例や、リーダーシップ開発につながるような知見を生み出す研究に取り組んでいきたいと考えています。またパラドキシカル・リーダーシップが機能するためには、フォロワーにもパラドックス・マインドセットやその他の何かが備わっている必要があるのではないかという仮説があり、それを解明することで、日本の多くの企業が取り組んでいる階層別研修のテーマに対するヒントも得られるのではないかと考えています。
今村都 特定助教
講座設立に対する想いについて教えてください
学部時代はタイ語を専攻していました。卒業後しばらく日本やタイの企業で働いた後、大学院に戻って研究を続けています。文化人類学のメソッドを活用しながら、これまでタイの農村から工業団地への移民労働者の労働観について研究をしてきました。そうした経験を元に、本講座では、人類学的なメソッドをビジネスに活用するための講義やワークショップも担当させていただきます。
今後の展望について教えてください
パラドックスの研究においては、私は特に、「伝統文化と資本主義」という対比に注目したいと考えています。パラドックスは社会の様々な次元に様々なかたちで存在するものですが、今、日本やタイなどアジアの社会で起こっている課題と向き合う際には、この「伝統文化と資本主義」のパラドックスとして捉えることがヒントになるのではないかと考えています。
そういった視点を取り入れながら皆様と一緒にパラドキシカル・リーダーシップについて考えていけたらと思います。
これから皆さんと、日本発の新しい知を切り開いていきます。
今後も研究報告、イベント実施報告などをさせていただきます。ぜひ、ご期待ください。
3/20追記
パラドキシカルリーシップ産学共同講座 設立シンポジウムの記事を公開しました。
ぜひ、ご覧ください。