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才能をつなげ、人と組織の価値を引き出す「B」の発想とは?

倉成氏オフィスの本棚の前にて。
「Curiosity-Go-Round」


働き方の変化やテクノロジーの進化などに伴い、個人と組織の関係性が大きく変化している昨今。 個人と組織は、より対等で協働する関係になってきていると言えるでしょう。 電通時代に個人活動(B面)を持つ社員56人と「電通Bチーム」を組織し、社会を変えるこれまでと違うオルタナティブな方法やプロジェクトを提供してきた株式会社Creative Project Base代表取締役 の倉成英俊氏は、「今の時代、自らの個性や社員の個性をもっと発揮させて仕事していくことが大切だ」と言います。倉成氏と「一人ひとりが大切にしていることや生きる目的が経営の起点」だと語るアルー代表取締役社長の落合文四郎が、才能をつなげ、人と組織の価値を引き出す「B」の発想について語り合いました。

※本稿は、2021年9月発行の当社機関誌 Alue Insight vol.4 『「人を育てる」と「人が育つ場をつくる」の両立を実現する、人材開発のDX』より抜粋したものです。

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倉成英俊

倉成 英俊
株式会社Creative Project Base 代表取締役

1975年生まれ。 東京大学機械工学科卒、同大学院中退。 2000年電通入社。 クリエーティブ局に配属、多数の広告を企画制作。そののち、広告のスキルを超拡大応用し、APEC JAPAN 2010 や東京モーターショー2011、IMF/世界銀行総会2012 日本開催の総合プロデュース、佐賀県有田焼創業400年 事業など、さまざまなジャンルのプロジェクトをリードする。2014年より個人活動(B面)を持つ社員56人と「電通Bチーム」を組織、社会を変えるこれまでと違うオルタナティブな方法やプロジェクトを社会に提供。2020年株式会社Creative Project Baseを起業。Marti Guxie により日本人初のex-designerに認定。


落合文四郎

落合 文四郎
アルー株式会社 代表取締役社長

東京大学大学院理学系研究科修了。 株式会社ボストンコンサルティンググループを経て、2003 年10月株式会社エデュ・ファクトリー(現在のアルー株式 会社)を設立し、代表取締役に就任。「夢が溢れる世界のために、人のあらゆる可能性を切り拓きます。」をミッションに掲げ、企業の人材開発・組織開発に取り組むほか、個人としても「教育は選択肢を広げる」という信念のもと、STEAM教育のプロジェクトに携わるなど公教育にも活動の範囲を広げている。




Aじゃなくてあえて「B」


落合文四郎(以下、落合) すてきなオフィスですね。 この本棚すごい!

Creative Project Baseオフィスにて。

倉成英俊氏(以下、敬称略) 来た人はみんな「何これ?」って驚いて、周りをぐるぐる回って中に入って「ここに1日中いたい」と言いますね。この本棚は、去年独立して6坪のオフィスを持った時に、「蔵書が全て入る本棚を作ってほしい。中に入れるようにして、一人でアイデアを練る場所にしたい」とオーダーしてできたものなんです。本棚ですが、デスクでもあり、テーブルでもあり、部屋でもあり、収納でもあります。

落合 へぇー。家に欲しいな(笑)。倉成さんの小学校時代の夢は「発明家」というだけあって、「こうしたい」っていう発想からいろんなことを実現していますよね。倉成さんが電通時代に立ち上げた「電通Bチーム」も、どんなきっかけで生まれたのか気になります。

倉成 その前に、電通Bチームについて簡単に説明しておかないといけませんね。電通Bチームとは、電通に実在する特殊クリエーティブ部隊です。本業(A面)以外に、個人的側面(B面=私的活動、すごい趣味など)を持っている社員が集まり、メンバーの多彩な特技と情報収集力を最大限活用し、世の中に今までと違う方法(=プランB)を提供しています。

落合 個人的な側面の「B面」と、A面が機能しづらくなっている時のオルタナティブアプローチを意味する「プランB」という、Bについての2つの由来があっての「Bチーム」なんですね。

倉成 Bチームの始まりは、2014年に新しいシンクタンクチームを組織することになり、「一番長くかかる リサーチを限りなくゼロにできないかな?」と思ったことがきっかけです。DJとして自身のレーベルを持つクリエーティブ・ディレクターや、小説家や旅ブロガーとして活動している社員など、多様なバックグラウンドを持つ人がたくさんいたので、彼らの情報を ネットワークしたらリサーチゼロで機能するシンクタンクを始められるんじゃないかとひらめいたのです。

落合 なるほど。「好きこそ物の上手なれ」って言いますが、もともと好きなことや得意なことだから、改めてリサーチする必要がないんですね。

倉成 そう。好きだからやっていることって、集まってくる情報の質が違うんです。誰しも、好きだから、やりたいからやっていることってあるんじゃないでしょうか?好きを仕事に混ぜて、誰かの役に立ち、社会をよりよく変えていけたらいいなと思って始めたのがBチームなんです。ちなみに、Bチームのビジョンは「自分たちが生きるこの社会をよりよくデザインする」こ とです。

落合 Bチーム自体が新しい価値観を体現していますもんね。

倉成 21世紀のアレックス・F・オズボーンになりたいんですよね。

落合 ブレスト考案者のオズボーンですか!?

倉成 僕、もともとブレストが大嫌いだったんです。 「とにかくアイデアを100個出しなさい」って、何のためにやるのかわからなくないですか?でも、そもそも オズボーンがブレストを思いついたのは、会議で否定 的な言葉を使う社員が増えたと感じて、これじゃだめ だと思ったことがきっかけなんです。そこで「オズボーンの4ルールズ」というものを作って会議してみたらうまくいったので、「ブレインストーミング」という名前をつけてみたところ、こんなに広まったんですよね。

落合 確かに、みんなが難しい顔をしている時に、「ブレストやろう」というだけで雰囲気変わりますもんね。それも、ブレストという概念があるからこそ。

倉成 そういうストーリーを聞いて、やっぱり広告草創期の人はすごいなと。それから大好きになったんです。だから、僕たちも世の中のためになる価値観に名前をつけて、コンセプトを発信していきたいと思っているんです。

落合 コンセプトを提唱する際に意識していることはありますか?

倉成  コンセプトは、コンセプトそのものというより、その裏にある人と、人の感情がセットになって初めて生まれるんです。「人がいて、人の感情がある」ですね。

落合 それって、アルーで「丸ごと」と言っているのと同じ感じがします。これからのリーダーは、部下をリソースとして見るのではなく、その人の人生も含めて、「丸ごと」扱う発想が必要なんですよね。

倉成 まさにそうですね。でも、いきなり「丸ごと」扱うのはハードルが高い。だから今こそ、「B」という発想を取り入れてみるといいのかなと思います。

倉成英俊


落合 確かに、今は「丸ごと」をなじませていく段階 かもしれませんね。まずは一人ひとりのB面に光を当ててみる。そういう意味でも「B」って、いいコンセプト。まさに現代の「ブレスト」ですね。

倉成 ありがとうございます。


「B」の発想が 今、企業に求められている


落合 お話を聞いていると、「Bチーム」「B面」の発想が今、企業には必要だと感じます。

倉成 今の日本企業が直面している課題って、「効率 vs人間性」の戦いなんじゃないかと思うんです。

落合 確かに、まじめにビジネスをやろうとすると、効率に偏ってしまいがちです。

倉成 ミッション、ビジョン、バリューですら、効率や資本市場受けを裏に感じちゃうんですよね。そこに本質はあるのかな。

落合 外部適合から逆算してしまっているのかもしれません。なんでそうなるんでしょうかね?

落合文四郎
本棚の中は、宝の山。

倉成 「とにかく結果を出さないと」って焦っているんじゃないかな。もっと遊びと長期的な視点が必要だと思います。そもそも人の才能が開花するのには時間がかかります。電通Bチームだって、結果を出すまでに3年かかってますから。

落合 これからの経営者や人事には、A面の公式な組織運営だけではなく、長期的な視点でB面の非公 式なネットワークを意識的に育んでいくことが求められていくでしょうね。社員のB面につながる活動を 支援するとか、B面が発揮できるような場をつくるとか。そこから新たなイノベーションも起こるのだと思 います。

倉成 そう。Bチームって、電通だからできたわけじゃないですからね。

落合 ただ、実際に自社でやるのは難しいのでは?と思っている読者の方も多そうです。企業でB面に取り組むにはどこから始めたらいいでしょうか?

倉成 方向性は2つ。「社員のB面をどう生かすか」と、「Bチームをどうつくるか」です。

落合 Bチームは、最近よく聞く「出島」と呼ばれるようなチームですね。ただ、「出島」を作って新規事業を立ち上げようとしたものの、なかなかうまくいっていないという話も聞きます。Bチームをつくるのもいいけど、まずは一人ひとりのB面、強みとかセンスを生かすという発想が必要かもしれませんね。

倉成 新しいことを始めるには必ずハードルがあるし、エネルギーが必要です。この本棚も、「そもそも大家さんにOKもらえるか?」っていうハードルがあったしね(笑)。

落合 一歩踏み出すためには、企業文化自体も変えていかないといけないですよね。

倉成 「B」を受け入れる雰囲気がないとうまくいかないですよ。B面の知見って、今すぐに業務に役立つかはわからないものなので、仕事の場で出すのを避けがち。まじめさが阻害するんです。


才能と才能を組み合わせるのがマネジメント


落合 こうして「B」の話をしていると、マネジメント観、リーダー観ともつながってくるなと感じます。

倉成 同感です。管理職って、「管理して、マイナスを起こさないようにする」というイメージがありますが、 今後は「組み合わせてどれだけ価値を生み出すか」という役割の重みが増すと思います。

落合 「ミスをなくす」から「価値を生み出す」ですね。Alue Insightでもよく言っていますが、管理して統制するだけではなくて、その人の情熱を知ったうえで、どんな風にそれらを組み合わせたら新しい価値が最大化されるか発想しようということですね。

倉成 管理なんてしないでくれよって思いますよ。才能と才能を組み合わせて何ができるかが大事なんだから。

落合 アルーとしても、マネジメント研修とかetudesを使った学びの場をつくるとか、B面的発想をいろんな角度から支援していきたいと思っていますので、倉成さんも力を貸していただけるとうれしいです。

倉成 もちろんです。早速ひとついいですか?アルーもまじめすぎるよね。B面をもっと出した方がいいんじゃない?

落合 そう見えちゃうかもしれませんね。実は、アルー内でも「ゆる~」っていうB面的プロジェクトがあって、不定期で社内報を発行したり、個人のB面について熱く語ったりするイベントを開催したりしてるんですよ。

倉成 それ、もっと外にも出していこうよ。アルーのB面ということで「Blue」というサイトを作ったらいいんじゃない?

落合 それ、いただきですね(笑)。


※本稿は、2021年9月発行の当社機関誌 Alue Insight vol.4 『「人を育てる」と「人が育つ場をつくる」の両立を実現する、人材開発のDX』より抜粋したものです。

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※記事の内容および所属等は、取材時点のものです


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