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社名の由来の「再定義」~ノンデザイナーが1年かけてCIとVIの策定にチャレンジした話②~

2023年4月、アルー株式会社では新たに策定したCI*1(コーポレートアイデンティティ)とVI*2(ビジュアルアイデンティティ)をリリースしました。いくつかの記事に分け、この度のCI/VI策定の想いや、策定した内容をご紹介していきます。シリーズになっていますが、記事はそれぞれ、単独でお読みいただけます。

本記事には、社名の由来を再定義した話をまとめていきます。
「再定義?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。そうです、再定義です。
もちろん元々の社名の由来はありますが、今回のCI/VI策定を機に、改めて会社の想いを社名の由来にも紐づけました。

この記事は、このような方に特におすすめです
● CIやVIなど、コピーやデザイン全般に関心がある
● CIやVI策定の流れを知りたい
● 社名の由来の再定義に関心がある
● デザイナーではないけど、急にブランド企画担当になって困っている

*1:CIとは、コーポレートアイデンティティの略。会社の軸と方向性をまとめた総称であり、組織の独自性を表すものである。
アルー株式会社では、基本理念(Mission、Vision、Value、アイデンティティ、コアバリュー)、ステートメント、VIで構成している。

*2:VIとは、ビジュアルアイデンティティの略。基本理念を視覚的に一貫性をもって表現するためのデザイン全般をまとめたもの。


第一弾はこちら。
ノンデザイナーが1年かけてCIとVIの策定にチャレンジした話①~「らしさ」と「価値」の探索~



「アルーさんの社名の由来って何?」というお客さまからの質問に対する社員の回答に、熱がこもらない


家族、友人、お客さまなど、社外の方に自社の社名の由来を聞かれたことは、皆さん一度はあるかと思います。皆さん、自信を持って自社の社名の由来を語れますか?

当社は2003年に設立し、現在の「アルー株式会社」の社名に変更したのは2006年です。社名変更時はもちろん文書が存在していましたが、残念ながら、現在は残っていません。まさに、エドヴァルド・ムンクの『叫び』の状態です。

叫び
企画者の心の中はこの状態でした


元々は、「all the possibilities(あらゆる可能性)」というMissionに紐づく文言がベースになっています。「all」が「al」にあたります。そして「ue」は、語感などを考慮して名づけられました。しかし、これだけでは相手に「すっと伝わる」を実現できず、Missionの話を交え、事業の話を交え、と話している間に話が冗長になり、コミュニケーションロスが発生する事態を招いていました。これが、社名の由来を再定義した最大の理由であり、解決したい課題です。

また、社名の由来は口頭伝承で新しい社員たちに伝えていたため、人によっては異なる表現をしていたり、解釈をしていたりしました。ここ数年で入社をした社員からは、「転職の時、知り合いにアルーをうまく伝えられなかった」という声も聞いていました。

ポイント
社名の由来を「一言で答えられない」場合は、整理が必要な場合がある。ただ、必ずしも作成し直さなければいけないというものではない
● 公式文書は必ず残す。残していないものは、消えていく(当たり前ですね…)


著名な企業を中心に、社名の由来を調査


社名の由来は設立時に作成するものであり、途中で整理し直すことは、あまり多くありません。今回パートナーとしてご一緒いただいた企業も同じように話されていました。

あまり前例がない中、まずは著名な企業を中心に社名の由来を調査し、由来を検討する際の切り口を明確化していきました。一例ですが、このような企業の情報を見ていました。

株式会社NTTドコモ様
<会社が大切にしている考えが由来になっているもの>

Do Communications Over The Mobile Network(移動通信網で実現する、積極的で豊かなコミュニケーション)の、頭文字を綴ったものとしました。あらゆる場所・場面でお客様に満足していただきたいという全社員の願いと決意が込められています。

株式会社NTTドコモ コーポレートアイデンティティより


アサヒグループホールディングス株式会社様 
<造語が由来になっているもの>

「カルピス」の名前の由来は、「カルシウム」とサンスクリット語の「サルピス」(最上の味という意味)です。創業者の三島海雲が2つの言葉をあわせて作った造語。1919年の発売以降、「カルピス」は時代を経て、“国民飲料”として愛される商品へと成長し、海外でも親しまれています。

アサヒグループホールディングス株式会社 カルピス ブランドヒストリーより


他にも、創業者の頭文字から社名をまとめたもの、主力製品のアナグラムで社名をつくったものなど、いくつかのパターンを調査しました。

調査が終わり、さあ整理しよう、というタイミングで活きてきたのが、30名以上の社員に協力してもらったインタビューの素材です。インタビューの結果、当社はall the possibilitiesというMissionに対する意識が非常に高いことが分かっていました。きれいに整っていなくても「大事な考えは既に社員の中」にしっかりあるのだと、インタビューを通じて改めて理解しました。そのため今回のプロジェクトでは、以下の方向で進めていくことにしました。

・新しいものを考えるのではなく、今ある社員の想いをまとめる
Missionを感じることができる整理、つまり会社が大事にしている考えを社名の由来にも反映させる切り口でまとめる

また、「all the possibilities」の「all」は、alueという社名の「al」へ既に反映されているため、それはそのまま活かし、Missionの考えを「ue」につなげることに注力することにしました。

そして検討を進める際、「すっと伝わる」以外にも以下のような制限を設けました。日本語で考えるとどうしても長い文章になってしまうため、伝えたいことをシンプルに表現できる、英語での整理を前提に考えています。

社名の由来再整理のポイント(軸)
・「説明すれば伝わる」よりも、「すっと伝わる」を大事にする
・なるべく短く、簡単な英語にする
・なるべく同じ意味で理解される単語にする
・既に会社が大切にしている財産を活かす(当社の場合は、「all the possibilities」)

ポイント
● CI/VIの整理は、社内外からの自社の見え方・考え・想いという鉱山から原石を掘り起こし、磨き上げる仕事。新たな鉱山を開拓する必要は必ずしもなく、既に目の前の鉱山の中に、原石はある
● 検討開始前に、検討の軸を整理する


意味を味わい、自分たちがしっくりくるものを探し、言葉を磨く


「all tha possibilities」というMissionの想いをalueの「ue」にも込めるために適切な英単語がないか検討をしていましたが、ここで壁が立ちはだかりました。そもそも、「ue」で終わる英単語が少ないのです。そのため、「ue」で終わらないものも含める形で候補を出しました。出てきた候補の一部をご紹介します。

① all the possibilities in you
② all the possibilities are value
③ all the possibilities for value
④ all the possibilities education
⑤ all the possibilities create future
⑥ all the possibilities create avenues
➆ all the possibilities make your story unique ☆こちらに決定☆
⑧ all the possibilities and uniqueness

最終的には➆に決まりましたが、「unique」という言葉が出てきたのは、検討プロセスの最後の方でした。「unique」と聞くと、日本では面白い、ユーモアがある、個性的であるというイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。私自身は、「面白い人生にするという意味か?」と、当初想像をしていました。辞典や世の中での使用例を参考にしながら言葉への解釈を進め、「唯一の」「独自の」といった意味合いで利用できることが分かり、Missionと融合できそうだという結論に至りました。

ここで大事なことは、何度も意味を考え、味わい、まずは「自分たちがしっくりくる」言葉を探すということです。そして、出てきた言葉を磨き上げます。この選定や磨き上げに正解はありません。

読み手によって解釈が割れてしまうものを除外していき、最後は社員の納得度の高いものを残しました。社外の方に「すっと伝わるか」は、パートナー企業にも意見をいただきながら絞り込みをしています。

英文が決まってから、日本語文の候補を出しました。出てきた候補はこちらです。英語で検討するか日本語で検討するかの違いはありますが、それ以外は同じ基準で選定していきました。

① 可能性が、あなたの物語を、あなたらしくする
② 可能性が、あなたにしかない物語をつくる
③ あらゆる可能性で、あなたにしかつくれない人生の物語を
④ 可能性が、人生という物語をあなたらしくする
⑤ あらゆる可能性が、人生という物語をあなたらしくする
 可能性が、あなたらしい人生の物語をつくる ☆こちらに決定☆
⑦ すべての可能性を、あなたらしい人生の物語のために
⑧ すべての可能性を、あなたらしい人生のストーリーのために


社名の由来に関しては、調査から言葉の決定まで2か月近くの時間を用いています。このようなプロセスを経て、CI/VIガイドラインは以下のようにまとめました。

◇◆◇◆◇◆▣◆◇◆◇◆◇

アルー株式会社 社名の由来
all the possibilities make your story unique
可能性が、あなたしい人生の物語をつくる。

「all the possibilities make your story unique」という文章の最初と最後の2文字をとって「alue」。

ここでいう「unique」は個性的、という意味だけではなく、「唯一無二の」という意味合いで利用しています。
教育によって選択肢が増え、「all the possibilities(あらゆる可能性)」にひらかれ、その選択肢から自己決定をしながら人生を歩んでいくことによって、「自分の人生の物語は、唯一無二(unique)なものなのだ」と実感する。
そのような人がひとりでも増えていってほしい
という、Missionに込めた願いを表現しています。

社名の由来
CI/VIガイドラインより
社名の由来
CI/VIガイドラインより

◇◆◇◆◇◆▣◆◇◆◇◆◇


「unique」は、検討時のように個性的、面白いといった意味で解釈される場面が多々あるかと考えました。そのため、「個性的、面白いといった使い方も包含するが、アルーではこのように解釈して利用する」という表現を明記しています。これは、解釈割れを少しでも防ぐためです。

ポイント
● コピーを考える際、辞書は私たちの大切なパートナーになる(語源、意味合いなどを調べる際、通例が本当に正しいとは限らないため)
● 社外にも「すっと伝わる」ために、まずは自社の社員が納得できる表現になっていることが大事


社名の由来の再整理、いかがでしたか。
社内への説明時に、「元々そうなのかと思うぐらい、理解しやすいかった」という声を社員からもらうことができ、今後の自社紹介が良い方向に変わっていく機運を感じています。この記事が、コピーやデザインに関心がある方、まさしく自社も社名の由来を再定義しなければならないという立場にいらっしゃる方などに、少しでも参考になるものであればうれしいです。

本記事はここまでとさせていただき、次の記事で当社のステートメントをご紹介していきます。

CI/VI策定の関連記事は、こちらに掲載しています。

ノンデザイナーが1年かけてCIとVIの策定にチャレンジした話①~「らしさ」と「価値」の探索~

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